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人材育成

2024年08月22日(木)

リスキリングとは?メリット・デメリットや実施の流れ、注意点について全解説

リスキリングとは?メリット・デメリットや実施の流れ、注意点について全解説

人材獲得競争が激しくなるなか、人材育成手法の一つである「リスキリング」に注目が集まっています。

リスキリングとは、業務上で必要な新しい知識を学ぶことを指し、変化するビジネス環境に対応できる人材を育成できます。DX化が進む現代において、従業員がリスキリングできる環境を整えておくことは、企業の課題のひとつだといえるでしょう。

今回は、リスキリングの概要やメリット・デメリット、リスキリングを実施する際の注意点を解説します。人材育成について悩んでいる企業担当者の方は、ぜひこの記事を参考に、自社にリスキリングの仕組みを取り入れられないか検討してみてください。

リスキリングとは?

技術革新やビジネスモデルの変化などの流れに対応するために、業務上で必要となる新しい知識やスキルを学ぶことを、リスキリング(Re-skilling)と呼びます。

また、経済産業省は、リスキリングを以下のとおり定義しています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

引用:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省

また、2020年に開催された世界経済会議(ダボス会議)では、2030年までに10億人のリスキリングを目指すとしたことからも、リスキリングの流れは世界的なものだといえるでしょう。

DX化にともないビジネスの変化が激しくなっている昨今、どのような場面にも対応できる人材があらゆる業界で求められています。人材の流動性が高まっているなか、よりよい人材を確保・育成するためにも、従業員がリスキリングできる体制を整えていく必要があるのです。

リスキリングとリカレント教育、アンラーニング、OJTの違い

リスキリングと混同されやすい概念に、リカレント教育、アンラーニング、OJTなどがあります。どれも人材教育・育成に関する用語ですが、趣旨は異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

リスキリングとリカレント教育の違い

リカレント(Recurrent)教育とは、学校教育を終えて就職したあとも、必要に応じて教育機関で学習を続け、生涯にわたりスキルアップとキャリアアップの両立を目指すことをいいます。

「教育を受ける期間」と「就労する期間」を交互に繰り返すことが、リカレント教育の特徴です。日本では厚生労働省や文部科学省、経済産業省などが、リカレント教育に関する学習支援や情報発信を行っており、企業や社会人をあと押ししています。

一方、リスキリングは、就労しながら新たなスキルの習得を目指す手法であり、就労を辞めてスキル習得のみに注力することはありません。また、リカレント教育は従業員が主体となって学習しますが、リスキリングは企業が主体となって教育を進めるといった違いもあります。

リスキリングとアンラーニングの違い

アンラーニング(Unlearning)とは、既存の仕事に対する信念やルーティンをいったん捨て、新しいスタイルを取り入れることをいい、「学習棄却」とも呼ばれています。

ビジネス環境の変化が激しい現代においては、従来の方法に固執して時代の波に乗り遅れてしまう企業も少なくありません。このような状況を回避するために、すでにある知識やスキルのなかで、有効ではなくなったものは思い切って捨ててしまい、代わりに新しいものを取り入れよう、というのがアンラーニングの趣旨です。

一方のリスキリングは、新しい知識やスキルの習得を目指すという点では共通するものの、捨てることを主眼とするものではありません。

リスキリングとOJTの違い

OJT(On-the-Job Training)とは、職場の上司や先輩が、新入社員や後輩に対して行う教育訓練のことです。OJTで習得するのは、既存の業務を円滑に進める方法であり、通常業務を通して、それに必要なスキルを実践的に身につけていきます。

一方のリスキリングは、新しい職場での仕事や、時代の流れにともない新たに発生した業務に対応するために必要な知識やスキルの習得を目指します。

OJTは既存の業務への対応を、リスキリングは新しい業務への対応を目的とした教育だといえるでしょう。

リスキリングのメリット・デメリット

リスキリングのメリット・デメリットの両方を知って、自社にどう取り入れるのかを検討してみましょう。

リスキリングのメリット

まずはリスキリングのメリットを解説します。

業務改善や効率化のアイデアが得られる

リスキリングで従業員が新たなスキルを習得できれば、業務改善や効率化の革新的なアイデアが得られるようになります。これまでにない視点・視野で業務を検証できるようになるのは、リスキリングの大きなメリットだといえるでしょう。

効率的に業務をこなす仕組みが構築できれば、残業や休日出勤が減り、ワークライフバランスの実現にも近づきます。業務の効率化は新たな教育機会を生み、業務改善のよいサイクルができる可能性もあるでしょう。

新たな人材の採用にかかるコストを削減できる

業界を問わず人材不足が深刻化し、優秀な人材の獲得が非常に難しい状況が続いています。

リスキリングによって、必要な知識やスキルを持った従業員を社内で育てられるようになれば、有能な人材を採用するために費やしてきた、膨大な時間やコストを削減できるでしょう。

従業員エンゲージメントの向上につながる

企業が、従業員のスキルアップのために学びの機会を積極的に提供すれば、従業員エンゲージメント(企業に対する理解・信頼感・貢献意欲)の向上にもつながります。従業員エンゲージメントの向上は、業績に直結することが知られており、今後も企業が成長していくためには欠かせない概念です。

リスキリングのデメリット

続いて、リスキリングのデメリットを解説します。

スキルを得た人材の流出リスクがある

リスキリングによって新たな知識やスキルを習得すると、従業員のキャリアの可能性が広がります。キャリアは自社に限ったものではないため、従業員によってはより好待遇の他社へ転職を希望する場合もあるでしょう。

時間やコストを費やしてリスキリングした従業員が他社へ行ってしまうと、自社にとって大きな損失になります。リスキリングと同時に、従業員をつなぎとめるための施策を講じる必要があるでしょう。

ある程度の時間・費用・リソースを割く必要がある

価値あるスキルを従業員に習得させるには、ある程度の時間や費用、人的リソースが必須です。

時間・費用・人的リソースが不十分なままリスキリングを行うと、プログラムが単発で終わってしまったり、学習資材を購入できなかったりするなど、十分な教育環境を用意できなくなる可能性があり、リスキリングの恩恵を得られません。

リスキリングを行う際には、計画性を持ち、必要な時間・費用・人的リソースを確保しておきましょう。

リスキリングのおもな流れ【全4ステップ】

リスキリングはどのような手順で行えばよいのでしょうか。ここでは、リスキリングの流れを4つのステップに分けて解説します。

【ステップ1】習得を目指すスキルと、対象者を決定する

まずは、現在の事業内容や業績などのデータを分析し、経営戦略を実現するために必要な要素を明確にしましょう。目的が定まっていないと、誰に何を学んでもらえばよいのかわからず、リスキリングが失敗に終わってしまいます。

リスキリングの目的が定まったうえで、従業員に習得させるスキルと、対象の従業員、組織を選定します。

【ステップ2】教育プログラムを選ぶ

リスキリングのプログラムには、研修やオンライン講座、社会人大学など、さまざまな選択肢があります。

自社の従業員の生活スタイルとマッチしており、無理なく効率よく学べるプログラムを慎重に選ぶことが重要です。プログラムのレベルを確認し、従業員に合ったプログラムを、順序よく受けられるよう調整してください。

自社で十分なリソースが割けない場合には、外部機関のサービスを利用するのもおすすめです。人材育成の専門家に委託すれば、自社でプログラムを用意するよりもよい結果が得られる可能性があります。

【ステップ3】実際にリスキリングに取り組んでもらう

リスキリングの詳細が決定したら、従業員に実施してもらいます。

このとき、強制的に学ばせないよう注意しましょう。従業員のモチベーションがともなわなければ、効率的なスキルの習得にはつながりません。

リスキリング中は、定期的に1on1ミーティングなどを行い、本人の意向などをヒアリングしながら、前向きに取り組めるようサポートしてください。従業員のモチベーションが上がるよう、評価制度や報酬を用意しておくのもおすすめです。

【ステップ4】リスキリングで習得したスキルを実践に取り入れる

リスキリングは手段であり、目的ではありません。習得したスキルをどのように実践に活かすかが重要です。

リスキリングした従業員には、可能な限り、実際の業務でそのスキルを活用する機会を用意しましょう。また、実践した結果に対する振り返りのタイミングを設けて、研鑽を続けさせることも大切です。

従業員の意見を参考にしながら、今後のリスキリングについても検討を重ねていきましょう。

リスキリングを進める際のポイント

 

メリットの多いリスキリングですが、メリットがあるからといって準備を十分にせず取り組んでしまうと、リスキリングが失敗に終わってしまう場合もあります。リスキリングを進める際には、以下の3つのポイントに注意してください。

社内の声を取り入れて教育プログラムを組む

リスキリングは、机上の空論をもとに進めてはいけません。現場の声に耳を傾け、現在業務で困っていることや改善したいことに役立つスキルを導き出してこそ、効果的で実践的なプログラムを実施できるようになります。

現場の声を聞かずにプログラムを組んでしまうと、的外れなスキル習得に時間やコストを費やしてしまうかもしれません。

従業員の理解・協力を得て、取り組みやすい環境を整備する

リスキリングの成功には、周囲の理解と協力が不可欠です。なぜリスキリングが必要なのか、どういった恩恵が得られるのか、といった点について周知し、全社が一丸となって取り組む体制を確立しましょう。

従業員の協力が得られないままリスキリングを進めてしまうと、教育が中途半端になってしまい、効果が得られません。

従業員のモチベーションを維持する工夫をする

リスキリングには時間がかかるため、リスキリング途中で対象者や周囲のモチベーションが下がってしまうケースも少なくありません。したがって、以下のような工夫を取り入れて、モチベーションが下がらないようにしましょう。

 少人数のチーム制で進め、切磋琢磨させる
 短期・長期の目標を設定し、定期的に振り返り、評価の場を設ける
 達成度に応じてインセンティブを用意する

まとめ

業務効率化や従業員エンゲージメントの向上につながるリスキリングは、人材育成の手法として有効です。リスキリングの方法や内容には多くの選択肢があるため、現場の声を聞きながら最適な環境を整えてください。

「従業員のリスキリングを進めたいが、どのような手段で進めたらよいかわからない」
「効果的に従業員(特に次世代の幹部候補)の育成を進めたい」
という企業様には、ボルテックスが提供する「在籍型出向サービス Vターンシップ」の活用がおすすめです。

Vターンシップとは「会社間留学」をサポートするサービスで、一時的に自社の従業員を他社に出向させる送出会社と、一時的に他社の従業員を受け入れる受入会社をつなぐ仕組みです。

送出会社は、従業員を出向させることで、他社のノウハウや人脈の獲得、新たなスキルの習得、従業員個人の成長促進などが見込めます。一方、受入会社は、即戦力を人件費などの少額の費用のみで確保できます。

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