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人材育成

2024年04月23日(火)

意外と知らない人材育成のキホン!育成効果を最大化させるポイント

意外と知らない人材育成のキホン!育成効果を最大化させるポイント

 

「自社の社員に、人材育成をするのは当然のこと」

 

そのことに異論を唱える企業は、ごく少数でしょう。ただし当たり前すぎるがゆえに、人材育成のキホンが分からないという方も意外に多いようです。

その結果、昔から行っている今の時代にそぐわない育成施策を継続していたり、自社にフィットしない育成施策を展開してしまったりする企業も少なくはありません。

人材育成の要諦は、「キホンを知る」、そのうえで「自社流にアレンジする」という観点です。
企業で働くうえで不可欠となる基本的な育成をベースとして、さらに自社で活躍しやすい要素に絞って育成するという流れが王道といえます。

 

今回は、知っているようで知らない企業で実施する人材育成のセオリーについて取り上げます。
現在行っている人材育成を見直したい方も、今後しっかりとした育成体系を構築したいとお考えの方も、参考にしていただければ幸いです。

 

人材育成とは

人材育成は英語で「Human resource development(HRD)」といいます。
育成を通じて、中長期的に企業成長を支える人材を増やすことを目的としています。

そのため人材育成の内容には、業務に必要なスキル・技術の習得のみならず、企業ミッションに基づいた仕事に対する姿勢や考え方を培うことも含まれます。

なお、企業内の人材育成は「人材教育」や「人材開発」などさまざまな言い方がされます。
いずれも厳密な使い分けや定義はないのですが、多くの企業でどのように使い分けをされているかを紹介します。

 

人材教育・人材開発との違い

人材育成は、社員の階層別でどのような能力が必要になるかを考え、必要な育成施策を投じる場合に使われることが多いでしょう。
たとえば、新入社員に社会人としての基本的なマナーや業界の知識などを教育することや、管理職に向けて基礎的なマネジメントスキルを付与する研修が、人材教育の代表的な内容です。

一方、人材開発は全社員を対象にして、広義にスキルや能力を開発し、組織力を高めていくことを目的にしています。
たとえば、企業ビジョンや人事ポリシーに応じた、社員全体の能力開発の指針を意味するケースが多い傾向にあります。

ピンポイントな教育の場合に使われるのが「人材教育」、中長期な目線・広い対象で使われるのが「人材開発」、両者のどちらのニュアンスも含まれるのが「人材育成」と認識しておくとよいでしょう。

 

日本企業における人材育成の現状

日本企業における人材育成の現状はどのようなものなのでしょうか。
あらためて日本企業の状況を知ることは、自社の人材育成を考えるにあたり、何かのヒントになるかもしれません。

人材育成の目的とは

厚生労働省の調査によると、企業が人材育成を行う目的で上位に選択された項目は以下のとおりです。

  • 「今いる従業員の能力をもう一段アップさせ、労働生産性を向上させる」と回答した企業は 81.9%と最も多い
  • 次いで「従業員のモチベーションを維持・向上させる」(63.0%)、「数年先の事業展開を考慮して、今後必要となる人材を育成する」(60.9%)となっている

参照:厚生労働省『平成30年版 労働経済の分析』企業が人材育成を行う目的について(P.135より)

 

人材を育成する目的の最優先は、企業業績に直接的に関係する生産性の観点が強いようです。
一方で、育成を通じて社員のやる気も高めたいという目的があることが分かります。

 

人材育成の課題

ただし実際に人材育成を進めるにあたっては、多くの企業では課題も感じているようです。

労働政策研究・研修機構の調査によると、以下の課題が上位二つで選択されています。

  •  指導する人材が不足している
  •  人材育成を行う時間がない

参照:「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(P28)

企業の人事部門やマネジメントは、人材育成に割ける人員や時間に課題を感じていることが分かります。
昨今は越境学習 やリカレント教育 など社外での学習方法も広がっているため、自社内にとらわれない人材育成の必要性が示唆される結果といえるでしょう。

 

企業が人材育成を考える基本的なプロセス

ここからは、実際に人材育成を考える場合に考えるべき基本のプロセスについてお伝えします。
プロセスの詳細内容は適宜アレンジすることも可能ですが、育成効果を最大化させるためには、どのステップも必要となります。ぜひ自社の状況を思い浮かべながら、ご一読ください。

目的の明確化

最初に、人材育成の目的を明確にします。
経営方針・中長期計画などを参考にしながら、人材育成のゴールを言語化しましょう。

たとえば中長期の経営戦略で新規事業による売上げ拡大を掲げているならば、人材育成の目的は「イノベーションを起こせるスキル開発」となるかもしれません。

人材育成の目的を言語化している企業は、実はそれほど多くありません。
ただ、目的を明確にすると、人材投資への予算も獲得しやすくなることに加え、社員の能力開発意欲を高める効果も期待できます。

現状の把握

人材育成の目的に基づき、人材育成面での現状課題を把握します。

部門・階層・年代・職種・社歴など、できるだけ詳細に現状分析を行い、現状を可視化していきます。
人材育成は定量データでの可視化が難しいこともあるため、場合によっては現場メンバーや管理職にヒアリングすることも有効でしょう。

ゴールまでのステップの設定

目的と現状がわかったら、その間のギャップも明らかになります。ゴールへのギャップを埋めるために、何を育成するべきか検討します。
具体的には、育成すべきスキルを特定し、どのような順序で習得していくかの優先順位をつけていきます。

ただし人材育成施策は、ある意味ゴールが見えにくい取り組みともいえます。
だからこそステップを可視化することで、「どこまで育成が進んでいるか」「環境変化に応じて、どこをチューニングすべきか」が検討できる効果が得られやすくなるでしょう。

ステップを進むことだけを是とするわけではなく、人材育成の指針となるべきステップを作る意識を大事にしてください。

手法の選択

最後にスキルを習得するための手法を選択していきます。
手法の詳細については次章で解説しますが、手法の選択段階になると、人事部門はさまざまな現実的な事情に配慮が必要となります。
人材育成に割ける予算、現場の繁忙期、スキル開発の難易度などの変数を考慮しながら、最適な手法を採択していきましょう。

人材育成の代表的な手法

人材育成をするにあたって、どのような企業でも取り入れやすい手法を紹介します。

OJT(On the Job Training)

OJTとは、日常業務の実践を通じて、業務に必要な知識やスキルを身につける育成手法です。
一般的には、先輩社員や上司が、対象メンバーに対して仕事を通じた指導やフィードバックを行い、成長を促していきます。
OJTは、研修を実施する外部講師を依頼する必要がない分、コストや業務工数のロスが発生しない点がメリットです。
一方で、育成する側の負担が大きく、育成する側のスキルによって効果が左右されやすい点がデメリットといえます。

Off-JT(Off the Job Training)

Off-JTとは、日常業務を離れて実施される育成手法です。
代表的なOff-JTとしては、教育研修や社外セミナーへの参加などが挙げられます。

Off-JTは、スキルに特化した知識を習得させられる点や、集中して育成が展開できる点がメリットです。
一方で、外部講師に研修を依頼するコストがかかる点や、現場の業務をストップさせる点がデメリットといえます。

社外での人材交流

広義の観点での人材育成としては、社外との人材交流もひとつの手法として考えられます。

たとえば、社外からの人材採用、出向、社外のプロジェクトへの参加などが代表的な手法です。
直接的な目的は人材育成ではなかったとしても、結果的に社外との接点は人の成長に大きく寄与することがあります。

特に、最近注目されているのが在籍出向(在籍型出向)です。
自社に籍を置きながら、一定期間他社に出向して必要なスキルの提供、または開発を行う形態です。

出向する側の社員は異なる文化や業務プロセスに触れることでの刺激が得られますし、受入れ側の社員は新たなスキルに触れられるメリットがあります。

越境学習などの潮流を受けて、社内だけにとどまらない人材育成として、注目すべき手法といえるでしょう。
実際にボルテックスの提供する在籍型出向サービス「Vターンシップ」を利用した企業様では、
「50代の社員に成長を促すことは難しいのではないかと思ったが、出向終了後の変化が大きく驚いている」
といった効果を実感する声も頂いています。

自己啓発

自己啓発とは、社員が自主的に行う能力開発やスキルアップのことです。Self Developmentを略して「SD」と呼ばれることもあります。

企業が社員の自己啓発を支援する施策としては、教育補助制度やカフェテリアプラン制度などが挙げられます。

自己啓発は、社員側の自主性が高いため、従業員満足度の向上につながる点がメリットです。
その一方で、企業に強制力がないため、コストに見合った成果を得られない懸念もあります。

人材育成を実施する側に必要なスキル

人材育成の効果を上げるためには、育成する側にも身につけるべきスキルがあります。
本章では、育成担当者に必要なスキルを紹介します。

目標管理能力

ここでの「目標」とは、育成対象者の目標のことです。
すなわち、対象者とともに育成後のゴール・目標を設定し、達成するためのサポートをすることが、育成担当には求められます。

育成目標を立てる際には、本人の課題認識や目的意識と、会社の経営方針や求める人材要件との両方を考慮する必要があります。
また、達成するためのプロセスにおいては、進捗状況を確認し、適切なアドバイスを与えるサポートも必要です。

育成を効果的に進めるには、本人の性格や業務状況を考慮し、最適な方法を探しながら進めなくてはなりません。
そのため、育成担当者に求められる目標管理能力には、「育成のゴールを設定する能力」「進捗を管理し、最適手段を選択・アレンジする能力」「適切なサポートを行う能力」などが含まれています。

論理的思考力

人材育成を考える際には、一人ひとり異なる状況を客観的に理解して、能力向上に結びつけるために論理的思考力が必要となります。

本来、論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、複雑な状態を分析・整理したうえで、原因を明確にし、問題を解決する方法を考える力のことです。

人材育成においては、おおよそ以下のステップで論理的思考力が必要となります。

  •  育成対象者の現状課題を客観的に把握・認識する
  •  課題を要素に分けて整理して全体を把握する
  •  育成の優先順位をつける
  •  最適な育成手法を選択する

育成に限ったことではありませんが、問題点を分解することは、施策の説得力を高めることにつながるでしょう。

コミュニケーション能力

育成を担当する側には、コミュニケーション能力は必須で求めたいスキルといえます。

コミュニケーション力は、育成対象者対象に解決すべき課題を伝える際に、効果を発揮します。
論理的思考力で問題点や解決方法を発見できたら、相手が理解・納得できるように伝える必要があるからです。

ロジカルに説得するだけでは、場合によっては本人の自信喪失につながってしまうリスクもあります。
相手の立場に立ったコミュニケーションをすることで、本人の課題克服に対してのモチベーションを喚起できるでしょう。

なお、コミュニケーション能力は、相手に情報を伝える能力だけでなく、「相手から情報をうまく受け取る・聞き出す能力」も必要となります。

一方的に伝えるだけではなく、本人の課題認識や課題克服に向けての意気込みなどを聞き出し、双方向のコミュニケーションが成立するよう留意してください。

コーチング・ティーチングスキル

人材を育成するには、コーチングやティーチングのスキルも必要です。

コーチングは自発性を促す手段で、正解やアドバイスなどは行わず話を傾聴し、本人自身が発見できるような問いを発する方法です。
主にコーチングでは、「傾聴スキル」「質問スキル」「承認スキル」の3つを使います。

逆に、ティーチングは自分の知識やスキルを伝授するスキルです。
相手に知識がないことを分かりやすく教えたり、業務上必須となる事項を習得させたりする場合に適したスキルです。また、大人数に対して一斉に教育しなければならないときにも役立ちます。

コーチングとティーチングを使い分けることで、より育成効果を高めることができるでしょう。

まとめ

人材育成は、経営資源のひとつである「ヒト」に密接に関わるため、企業での取り組みの重要性は年々増しているといえるでしょう。

さらに昨今では、経済産業省主導の「人的資本経営」の潮流も影響し、企業は人材を資源ではなく資本と見なして、必要な投資をしていくことが求められています。

今回ご紹介したように、育成効果を最大化させるためには、基本のプロセスである「目的の明確化~手法の選択」を丁寧に検討し、なおかつ目的を全プロセスにおいて念頭に置くことが重要となります。

ぜひ記事をお読みいただき、自社らしい人材育成のプランニングをする参考にしていただければ幸いです。

 

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